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風と共に来たる…

第9回 現実となった空き家問題に直面して

11月3日(火・祝)にオープンした『瞽女ミュージアム高田』は、今風に言えば、築78年の町家(登録文化財)の「リノベーション物件」です。建築専門家向けには、コンバージョン(用途転換)とも言えるでしょう。もともと町家とは、そこで商売を営みながら生活したものなので、店舗併用住宅と言えます。やがて、転業・廃業で専用住宅に変わり、さらに、住人がいなくなって、空き家が増えてきました。

 いわゆる「空き家問題」は、以前は山間過疎地の課題でしたが、近年は地方都市の旧市街地から大都市郊外の住宅団地まで拡がりつつあります。ある意味では、人口減少と一極集中の過程で起こる普遍的な現象かもしれません。よそ事と思っているうちに、上越の中心市街地である高田の町内も高齢化してきました。

 建物は放置すれば老朽化の一途ですが、使い続ける、つまり維持管理することで、寿命が延びます。とりわけ日本の木造建築は、劣化した部材の取替え修理から、ある程度の間取り変更や大規模な補強修繕までもが可能な建築システムです。これは寺社仏閣のような文化財だけでなく、普通の住宅でもほぼ同じこと。そおっと持ち上げて基礎を新設することもできるし、鉄筋コンクリート造よりも持続可能な構法だと思います。

ころで、古くて味わい深い建物を修理修繕するだけでは、空き家問題は解消できません。そこに新たな住人が住み始める。居住だけでなく、たとえば会社の事務所として使う。カフェや雑貨店に転用する。公開利用できる施設やご近所の寄合所に。……様々な活用の手法がありそうです。このご時世に人口増加というのはちょっと現実離れしていますが、利用者数の増加は、夢物語ではありません。

 関わる人の数を増やすには、それなりの内容、今風に言えばプログラムとかコンテンツが大切。試行錯誤もあるし、運というか「縁」もあります。築104年で現役最古級の映画館「高田世界館」は、NPOで維持管理を引き受けて6年になります。昨年、上野迪音さんという若い支配人と出会えたことで、プログラムが充実して、同世代の支援者も増えています。静かな熱気とエネルギーを感じるようになってきました。映画を観るだけでなく、そこで他者と価値を共有できる場を創出しています。

女ミュージアム高田は、『麻屋髙野』という素晴らしい町家の空間が高田瞽女の歴史と斎藤真一の世界を包み込み、価値を共有できる場を生み出しているのでしょう。開館してから既に300人のお客様にお越しいただきました。町家と瞽女、斎藤真一さんや市川信夫先生の思い出を静かに語るお客様もいらっしゃいます。心から感謝申し上げます。

 開館記念展覧会は11月23日(月・祝)まで。その後は当面、土・日のオープンと平日の予約公開で進めていきます。魅力的なプログラムとそれを活かせる人材を見出し、活用手法に則した改修計画と資金調達を図ることで、常設ミュージアムにしていくことを目指しています。刷新renovation & 転換conversionの手法を駆使して、歴史を刻んだ古い家に、もう一度息遣いが戻るように、その場を創出する人々を探しています。

  • ▲高田世界館で
     サイレント映画ワークショップ

  • ▲瞽女ミュージアム開館初日

  • ▲「瞽女さんと歩く」詩の朗読会

人が居ないのに、生活の痕跡が残ったまま建物だけが残されて、やがて『風化』していくのは、SF映画のシュールな世界の様ですが、3.11以降の避難指示地域がそれに近いかもしれません。私はこの「現実」から目を逸らすことはできません。常に無念の思いに駆られ、そして復興を祈り続けます。

(2015年11月30日 掲載)


関 由有子(せき ゆうこ)
上越市在住。高田にてスロウライフ(スロウワーク?)を実践しつつ、家づくり・街づくりに取り組む日々。

せきゆうこ設計室 木の建築と家具
一級建築士、住環境福祉コーディネーター、「越後高田 あわゆき組」代表
NPO法人「街なか映画館再生委員会」・「街なみFocus」・「高田瞽女の文化を保存・発信する会」所属

 

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