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これが私の生きる道

これが私の生きる道:第237回 伊藤 一裕(いとう かずひろ)さん

第237回

職人が腕を振るえない時代、
「ありったけの手間」を革に掛ける

2017年11月30日( た)

伊藤 一裕(いとう かずひろ)さん
上越市三郷区 在住
革製品のアトリエ fugosen 代表 革職人

 伊藤一裕さんは、財布や名刺入れなど革製品づくりの全工程を一人で手掛ける職人だ。使い易く設計、裁断したパーツを、革の質感やしなやかさを最大限に生かしつつ貼り合わせ、縫製。繰り返し磨いて滑らかに仕上げる。

「この50年で、ものづくりの世界は機械化・量産化が進み、職人が惜しみなく腕を振るうことが難しい時代になりました」――そう話す伊藤さん自身、建築系の職人の家に生まれた。本当の職人には、機械には真似のできない優れた技術がある。だが、機械化・量産化に迎合できる者にしか生き残りの道が無い現状に、以前から疑問を持っていた。

初めは革職人を目指していたわけではなかった。革靴が好きで集めていたある時、有名な銘ではなく見た目も普通なのに、しばらく履くと明らかに「他と違う」と感じる靴と出会った。後日、一人の職人の手による靴と判明。これが契機で革職人に興味を抱くようになり、思い切って東京の憧れの職人の工房を訪ねた。飛び込み訪問だったにも関わらず丁寧な説明と共にその仕事を見学させてもらえて、そして、訊かれた。

「この仕事をやりたいの? 食っていけないよ」

伊藤さんの答えは、「やりたいです」。以降、その工房に通い、職人としてのあり方や商品の創り方を学ぶようになった。

「革は言うことを聞きません。層を重ねるほど癖が強くなるし、同じ革も存在しない」

だからこそ、理想形を求めてありったけの手間を掛ける。

「ひとつでも工程を省くと、それはもう別の物になってしまう。質にこだわる限り、量産はできない・・・・んです。でも、どんなに手を尽くしても新品の時は見た目では違いが分かりにくいのが難しいところ」

伊藤さんが手掛けるのは、オリジナルの基本型を元に革の種類や色が選べるパターンオーダーの品。

「お客様のご要望を伺ってから、一つひとつ作ります。1年ほどすると『今まで使っていたものと全然違う』と言って頂けるのが嬉しいですね」

本当の良いものには、使い続けることで “自分のもの” になっていく喜びがある。大量生産・消費の時代に抗い、ものづくりに挑む若き職人に、エールを送りたい。

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商品は長財布、折財布、コインケース、名刺入れ、キーホルダーがあり、すべて一つひとつ手作りで仕上げる。お客さんの手に馴染むよう、ありったけの手間を掛ける。

[E-mail]
sonehara1980●gmail.com
(●を半角@に変えてください)

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