
雪景色にたつビニールハウスの中は、濃緑のアスパラ菜の畑が広がっている。収穫に精を出しているのは日浅雅也さん。芽を出したばかりのトマトの苗は、5月頃の収穫に向けて成長中だ。夫婦で始めた「くびきの菜園」での野菜作りは6年目になる。
「とにかく忙しかったですね。2人とも出張で熱を出した子どもを迎えに行けなかったこともありました」。共働きをしていたサラリーマン時代は、心の余裕がなかったと振り返る。新天地を求めて選んだのが妻の故郷上越だった。2人とも農学部で学んだものの、畑作は未知の世界だった。
「粘土の多い土で、水はけがよくないんですよ」まず取りかかったのは良質な土作り。強制排水で地下水を抜くことからしていかなければならなかった。自家製肥料は、地元産の米ぬか、魚粕、菜種油粕に微生物を加えるなど、できるだけ地元の資材を使うのを信条にしている。農薬は極力使いたくないため、作物を元気に育てたり生き物の力を活かすことのできる環境を整えたいと語る。
初めてトマトを栽培したときのことだ。収穫直前のトマト2000本がほとんどすべて枯れてしまったことがあった。「接ぎ木を薦めるアドバイスを聞かずに自己流を押し通し、土壌病害にやられたんですね」。気象条件が少し変われば生き物の条件も変わる。常に同じ条件で育てることはできない難しさを感じるという。「うまくいくのもいかないのも自分次第。誰かに指示されることもないですからね」と日浅さん。喜びや気楽さの反面、苦労や失敗も重ねる日々だ。
「お客さまの声をダイレクトに聞くことが一番の励み」だと直売にもこだわる。「誰が食べてもおいしいもの。自分にも、食べてくれる人にも嘘をつかない野菜を作りたい」という思いを胸に秘め、今日も土に向かっている。 (ゆ)
日浅 雅也(ひあさ まさや)さん
くびきの菜園 上越市在住
