
幾何学的なパターンにシックな色合いのマグカップは、柳澤さんのオリジナルのデザインだ。ラインをきっちりと浮かび上がらせる手法を見いだしたことで、陶房柳澤としての形がひとつ確立された。
「画家になりたい」という夢を持ったのは小学生の頃だった。その後、高校でデザインを学ぶうちに「生活の中で使える製品としての美術」の方向に魅力を感じるようになる。「早くもの作りの現場を学びたい」と京都にある伝統工芸の専門学校への道を選んだ。
「毎日帰れと言われましたね」栃木で益子焼の窯元で働き始めた頃、言われた言葉が心に残る。「益子焼の持つ魅力を見いだせないままの自分が見抜かれていたのかもしれないですね」と、一生懸命が空回りしていた修業時代を振り返る。
他人ができないこと、替えがきかないものをつくっていきたいという柳澤さん。2003年に帰郷して陶房を立ち上げることになった。今になって回り道だと思っていたデッサンなどの勉強をもっと多く学んでおけばよかったと後悔することもあるという。「同じことを繰り返すのではなく、常に進化していきたい。まだまだ色も技術も足りない」と感じる日々だ。
結婚式の引き出物として絵付けした皿は、エンドレスに続く二本の線で、つかず離れずよりそう夫婦の姿をイメージしたという。何気なく見えるデザインも、前面に出さない作家としての思いやドラマが込められているのだ。幾何学模様は見る人によってイメージが無限に膨らんでいく。手にとって使いたいと思わせる「惚れさせる器」こそが、柳澤さんの目指す夢なのかもしれない。 (ゆ)
柳澤 千秋(やなぎさわ ちあき)さん
陶房柳澤 上越市在住

